Mindful Hypnobirthing
Mindful Hypnobirthing: Hypnosis and Mindfulness Techniques for a Calm and Confident Birth
- 作者: Sophie Fletcher
- 出版社/メーカー: Ebury Digital
- 発売日: 2014/03/06
- メディア: Kindle版
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なんだか怪しいタイトルですが、hypnobirthingとは日本で知られているところのソフロロジー(こちらはフランス発祥)とすっかり同じものではないかと?
呼吸法やメディテーションを駆使して、お産を楽なものに変えていきましょうという実践方法の1つです。事前に音楽やアファメーションを使って練習し、本番も自然とリラックス状態にもっていくあたりがhypnoとされる所以かと思いますが、はっきり言って所謂催眠的な要素はないので、スピリチュアル系、宗教系、科学的根拠ない系が苦手な私でもアレルギーなく読めました。
ただ筆者はイギリス人なのでイギリス独特のお産システムに依るところが大きい。日本に比べると、自宅出産や水中出産なども含め自由度が高く、日本で出産する人にとってはあまり役に立たない情報も多いです。笑
Hypnobirthingを実践する人の狙いは、できるだけ医療介入を避け、undisturbed birthを遂行すること。無痛分娩はもちろんのこと、助産師からの子宮口の開き具合のチェックや必要以上に話しかけられることまで拒否するチョイスを生かして、できるだけ自然に近い形で出産することが目的です。
面白いなと思ったのが、hypnobirthingを取り入れている人ですら、「もう無理!」「無痛にして!」と根を上げてしまうこともある"transition"というステージがあるらしく、とにかくこのステージでは思わぬ返答をしてしまいがちなので事前に「無痛にしますか?」と聞かないで欲しい、とバースプラン(著者はお産は「プラン」なんてできないものなのでbirth preferencesという言葉を用いていますが)に記載しておくことも重要だとか。
痛みや恐怖で筋肉がこわばり、お産が進まなくなったり余計な痛みが出てしまうというのは非常に理にかなっている気がするので、とにかくいかにリラックスして出産に臨めるかが安産への近道なのかなと思います。
The Tattooist of Auschwitz by Heather Morris
The Tattooist of Auschwitz: the heart-breaking and unforgettable international bestseller
- 作者: Heather Morris
- 出版社/メーカー: Zaffre
- 発売日: 2018/01/11
- メディア: Kindle版
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アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所に移送されたユダヤ系スロバキア人Lale。強制労働者達の腕に囚人番号の入れ墨を入れるtatooistとしての仕事をあてがわれた後、同じく囚人のGitaという女性と恋に落ちる。
二人の出会いから行く末までを追った真実に基づくラブストーリーということで、かなりの高評価を得ていたので手にしてみました。
確かにホロコーストの中でハッピーエンドに至った二人の運命は信じ難いものがあり、まず背景の重みが普通の恋愛物語とは全く違います。それだけに魂を揺さぶられるような感動を期待していた私にとっては、筆者の力量が事実に追いついていない印象で若干がっかりでした。いくつかのレビューにもあった通り、非常に読みやすいれどもpoor writingという意見には生意気にも同調せざるをえないです…。
とはいえ、二人のドラマティックなラブストーリーは悲惨な歴史の中で静かに輝く宝石のような出来事であり、暗闇に一筋の光を見たような気分でした。
こっそり手に入れたチョコレートを目を瞑ったGitaの口の中に放り込んでやるシーンには思わずうっとりしてしまったし、人目を盗んだ二人の密会の様子にも毎回ドキドキさせられます。
集団虐殺やリンチのシーンも所々出てくるけれど、そこまで重い描写はなく、フォーカスはあくまでLaleとGita。これもLale自身の希望を作者が汲んだ上でのストーリーテリングなのかもしれませんが、思いの外軽いタッチで描かれているので、残虐シーンが苦手という方にもオススメできるかも。
The Music of Chance by Paul Auster
離婚、父親の死、それに伴い手に入った遺産。
Paul Austerの小説には馴染みのあるキーワードのような気がしますが、今回の主人公Nasheもmental breakdownに見舞われ、現実から逃げるようにただひたすらアメリカ中をドライブする場面から始まります。
道中、何者かにボコボコにされたPozziiというポーカーギャンブラーを救い、一攫千金を狙ってミリオネアたち(FlowerとStone)に勝負を挑みに行くところから話がグングンと面白くなりました。
とにかくミリオネア側の存在が最初から最後まで謎めいていて、話の展開が読めるようで読めず、ラスト1ページまでどういう結末を迎えるんだろうとドキドキ。
数々のレアなお宝を手にし、巨大な家に住んでいるものの、夕食はお子様メニューのようなハンバーガーというギャップだったり(おでぶのFlowerが「食べないならちょうだい」とStoneから直に手渡しでバーガーをもらう場面に唖然とするNashe)、Stoneが趣味で作っている建築模型("City of the World")の未完成部分には何を作る予定なのかと尋ねると「この模型のミニチュア版を入れる」と言うエキセントリックさだったり、ハイソな様相とは裏腹にチラ見えする「滑稽さ」「幼稚さ」が二人の存在を一層奇妙なものにしていました。
おまけに話の途中から忽然と姿を消すのに、それでも存在感満載なのです。
彼らの下で働くforemanのMurksという老人も、最後まで信頼に値する人物か確信が持てず、どこかでNasheがまんまと騙されるのではないかとハラハラしましたが、いずれにしても胸にズシリと来る結末で、一人の人間が破滅に追い込まれて行く過程が非常にリアルに感じられるお話でした。
自由を求めて賭けに出たものの、結果的には自由を奪われ、最後は再び手に入りかけた自由との繋がりを断つことを決めたNashe。抵抗できない外側からのパワーに翻弄されていく彼に、読者としても翻弄され続け、グイグイ読み進められます。
20代の頃にはまっていたPaul Austerは、生活が落ち着いてきたのを機になんとなく疎遠になってしまいましたが、久しぶりに読んで若かりし頃人生に迷っていた自分を思い出しました。
筆者の紡ぎ出す閉塞感、孤独感は、誰にでも一生に一度くらいは共感できる時があるんじゃないかな、なんて思います。シンクロしまくっていた過去や、逆に一歩引いて完全に傍観できる今を鑑みると、私にとっては自分の立ち位置を確認できる、そんな作家な気がします。
邦訳は言わずもがなな柴田元幸氏。
- 作者: ポールオースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/11/28
- メディア: 文庫
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Fahrenheit 451 by Ray Bradbury
Fahrenheit 451 (Flamingo Modern Classics)
- 作者: Ray Bradbury
- 出版社/メーカー: Flamingo
- 発売日: 1999/08/16
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舞台となるのは、書物の所有が禁じられた未来の社会。書物を隠し持っている国民は、かつては消防を生業としたfiremanたちによって家ごと焼き払われる。
主人公はそんな自分の仕事に誇りを持つfiremanのMontag。Clarrisseという一風変わった、しかし感受性豊かな少女との出会いや、書物と共に焼かれることを選んだ老女の死を通じて、この抑制された社会に疑問を抱き始めます。
そして家々からこっそり書物を盗み、本の魅力に取り憑かれていくのですが…。
テレビやコミックブックといった娯楽が氾濫し、本そのものやそこから得られる叡智に大衆が興味を失った世界はひんやりとした恐ろしさが蔓延しています。壁一面の巨大テレビを「家族」と呼ぶMontagの妻やその友人たちの低俗な会話からも伺えるように、人々の思考能力が停止し、結婚相手とどのように出会ったかさえ忘れてしまうほど記憶力も低下していくのですから。
スマフォやネットの台頭によって受け身な時間の過ごし方がもはや一般的となった現代と重なる部分が大いにあり、自分の生活にも危機感を感じてしまいました。しかし、この本を読んだ感想をブログにアップしているという皮肉には筆者もビックリだろうな…。電子媒体ではなく、ペーパーバックで読んだだけまだマシかなという気はしますが。
Montagが協力を求めたFaberという教授の言葉が力強く印象的でした。
本が禁じられた社会で失われた3つのこと。
1つ目は"qualty of information"、2つ目は"leisure to digest it"、そして3つ目は"the right to carry out actions based on what we learn from the interaction of the first two"
1953年に出版された本でありながらも、マスメディアの発展による読書の意義の喪失に警笛を鳴らした筆者の先見の明は実に見事だなと思います。
改めてlife time workとして本を読むことを大切にしていきたいな、と思わされた一冊でした。
評判の良い新訳版もいつか読んでみたいです。